FIRE計算で教育費をどう考える?子ども2人家庭の教育費ピークに注意
FIRE計算では、年間生活費をもとに必要資産額を考えることが多くあります。
たとえば、年間生活費の25倍を目安にしたり、4%ルールを参考にしたりする方法です。これは、FIREを考えるうえで分かりやすい出発点になります。
ただし、子どもがいる家庭では、教育費が毎年同じようにかかるわけではありません。進学時期によって支出が大きくなり、住宅ローンや老後準備と重なることもあります。
この記事では、子どもがいる家庭がFIREやサイドFIREを考えるときに、教育費をどうFIRE計算へ入れるべきかを整理します。
子どもがいる家庭のFIRE計算で教育費が重要な理由
子どもがいない家庭と、子どもがいる家庭では、FIRE計算で見るべきポイントが変わります。
子どもがいる家庭では、生活費に加えて教育費が発生します。しかも、教育費は毎年均等にかかるわけではなく、進学段階によって大きく変わります。
特に大学進学前後は、入学金、授業料、受験費用、下宿費用、仕送りなどが重なり、家計への負担が一時的に大きくなりやすい時期です。
FIRE計算で年間生活費だけを見ていると、この教育費ピークを見落とす可能性があります。
そのため、子どもがいる家庭では、単純な必要資産額だけでなく、親の年齢ごとの教育費の山を確認することが大切です。
教育費は毎年一定ではない
教育費を考えるときは、平均額だけでなく、どの時期に支出が大きくなりやすいかを見る必要があります。
文部科学省の「令和5年度 子供の学習費調査」では、1年間の学習費総額の目安として、公立小学校は約36.7万円、私立小学校は約174.2万円、公立中学校は約54.2万円、私立中学校は約156万円、公立高校は約59.7万円、私立高校は約117.9万円とされています。
ここでいう学習費には、学校教育費、学校給食費、学校外活動費などが含まれます。家庭によって、塾、習い事、部活動、交通費などの負担は大きく変わります。
| 学校段階 | 公立の目安 | 私立の目安 |
|---|---|---|
| 小学校 | 約36.7万円/年 | 約174.2万円/年 |
| 中学校 | 約54.2万円/年 | 約156万円/年 |
| 高校 | 約59.7万円/年 | 約117.9万円/年 |
この表を見るだけでも、公立か私立かによって教育費が大きく変わることが分かります。
ただし、FIRE計算で特に注意したいのは、単年の平均額よりも、支出が大きくなる時期です。
小学校から高校までは比較的なだらかに支出が続く場合でも、大学進学時期には入学時費用や授業料がまとまって発生しやすくなります。
大学進学時期に支出が大きくなりやすい
大学費用は、教育費ピークを考えるうえで特に重要です。
国立大学では、標準額として入学料28.2万円、授業料53.58万円が示されており、初年度は合計で約81.8万円がひとつの目安になります。
私立大学では、令和7年度の文部科学省調査で、私立大学の初年度学生納付金等の平均額は約150.8万円とされています。これは授業料、入学料、施設設備費、実験実習料、その他を含む平均です。
ただし、実際には学部や大学によって大きく差があります。理系、医歯薬系、下宿、仕送り、受験費用などが加わると、家計負担はさらに大きくなります。
つまり、大学進学時期は「普段の生活費に少し教育費が上乗せされる」というより、家計全体の支出が一段上がる可能性がある時期です。
教育費ピークは親の年齢で見ることが大切
教育費をFIRE計算に入れるときは、子どもの年齢だけでなく、親の年齢で見ることが重要です。
なぜなら、FIREやサイドFIREを考えるのは親の年齢であり、資産形成や住宅ローン、老後準備も親の年齢と関係しているからです。
たとえば、40歳で子どもが4歳と1歳の家庭を考えます。
上の子が大学進学を迎える18歳ごろには、親は54歳前後です。下の子が大学進学を迎えるころには、親は57歳前後です。
つまり、40歳時点ではまだ教育費が大きく見えなくても、50代半ばから後半にかけて教育費の大きな山が来やすいということです。
この時期に住宅ローン返済がまだ残っていたり、サイドFIREで収入を減らしていたりすると、資産の減り方は単純なFIRE計算とは大きく変わる可能性があります。
子ども2人以上では教育費ピークが重なる可能性がある
子どもが2人以上いる家庭では、教育費ピークの重なり方も重要です。
たとえば、子どもが3歳差の場合、上の子の大学入学と下の子の高校入学が近い時期に重なりやすくなります。
この時期には、上の子の大学入学費用や授業料に加えて、下の子の高校進学費用、塾代、部活動費などが重なる可能性があります。
また、4歳差の場合でも、上の子が大学生の時期に下の子が高校生になるなど、複数年にわたって教育費が高い状態が続くことがあります。
FIRE計算で年間生活費を一定として見ていると、このような一時的な支出増を見落としやすくなります。
教育費で大切なのは、合計額だけではありません。
「何歳のときに」「どの支出が」「どれくらい重なるか」を見ることです。
完全FIREか、サイドFIREか?教育費ピークのタイミングで判断が変わる
教育費ピークの前後では、完全FIREとサイドFIREの考え方も変わります。
完全FIREとは、仕事収入をほぼ前提にせず、資産収入や取り崩しで生活する考え方です。一方でサイドFIREは、生活費の一部を仕事収入で補いながら、資産の取り崩しを抑える考え方です。
教育費ピーク後にFIREする場合
教育費ピークを過ぎてからFIREする場合、大学費用などの大きな支出を現役収入でまかなえる可能性があります。
この場合、FIRE開始時点で教育費の大きな山を越えているため、資産の見通しは比較的立てやすくなります。
もちろん老後資金や住宅ローンの状況は別途確認が必要ですが、教育費という大きな不確定要素は小さくなります。
教育費ピーク途中でFIREする場合
教育費ピークの途中でFIREする場合は、資産を取り崩しながら教育費も支払うことになります。
この時期に市場環境が悪かったり、想定より教育費が大きくなったりすると、資産の減り方が想定より早くなる可能性があります。
そのため、完全FIREを考える場合でも、慎重シナリオで確認することが重要です。
教育費ピーク直前にFIREする場合
最も注意が必要なのは、教育費ピークの直前に完全FIREするケースです。
収入を大きく減らした直後に教育費が増えるため、資産が減るタイミングと支出が増えるタイミングが重なります。
この場合、完全FIREよりもサイドFIREの方が現実的になることがあります。
たとえば、サイドFIRE後に月10万円の収入があれば、年間120万円分の取り崩しを抑えられます。月15万円なら年間180万円です。
教育費ピークが5年続くと考えると、単純計算では600万〜900万円分の取り崩しを抑える効果があります。
ただし、これはあくまで単純例です。実際には税金、社会保険、働ける期間、運用成績、教育費の実額によって結果は変わります。
大切なのは、完全FIREかサイドFIREかを感覚で決めるのではなく、教育費ピークとの関係で確認することです。
教育費と住宅ローンが重なるとFIRE計算は厳しくなりやすい
教育費だけでなく、住宅ローンとの重なりも重要です。
住宅ローンが完済していれば、住居費の負担は大きく下がる可能性があります。一方で、教育費ピークの時期に住宅ローン返済が残っていると、家計への負担は大きくなります。
40歳で子どもが4歳と1歳、住宅ローン残30年の家庭では、子どもの大学進学時期である50代半ばから後半にも、住宅ローンが残っている可能性があります。
この場合、教育費、住宅ローン、老後準備が同じ時期に重なりやすくなります。
単純に「資産がいくらあればFIREできるか」だけを見ると、この重なりは見えにくくなります。
FIRE計算では、住宅ローン完済時期と教育費ピークを同じ時間軸で見ることが大切です。
教育費をFIRE計算に入れるときの考え方
教育費は、平均額だけで判断しない方がよい項目です。
進学先、公立か私立か、自宅通学か下宿か、塾や習い事をどの程度考えるかによって、必要な金額は大きく変わります。
そのため、FIRE計算に教育費を入れるときは、以下のようなパターンで考えると整理しやすくなります。
| 進学パターン | 教育費ピークの見方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 公立中心・国公立大学・自宅通学 | 比較的抑えやすいが、大学初年度費用はまとまって発生する | 塾代、受験費用、交通費も確認 |
| 公立中心・私立大学・自宅通学 | 大学進学時期に支出が大きくなりやすい | 私立大学の学部差に注意 |
| 公立中心・大学下宿あり | 学費に加えて家賃・生活費・仕送りが発生しやすい | 教育費ピークが数年間続く可能性 |
| 中学・高校から私立 | 大学前から教育費が大きくなりやすい | 子ども2人以上では重なり方に注意 |
この表は、正確な金額を示すものではありません。
大切なのは、「自分の家庭がどのパターンに近いか」を考え、教育費ピークがいつ来るかを確認することです。
また、教育費は予定通りに進まないこともあります。進学先の変更、浪人、下宿、留学、奨学金の利用などで結果は変わります。
だからこそ、標準的な見通しだけでなく、少し慎重な条件でも確認しておくと安心です。
生活設計シミュレーターで教育費ピークを確認する
教育費ピークは、頭の中だけで考えるより、年齢ごとの表やグラフで見た方が分かりやすくなります。
LIFE PLAN LABの生活設計シミュレーターでは、子どもの人数や年齢、進学方針、住宅ローン、FIRE希望時期、サイドFIRE後の収入などを入力して、将来の資産推移を概算できます。
確認したいポイントは以下です。
- 教育費ピークが親の何歳ごろに来るか
- その時期に住宅ローンが残っているか
- FIREまたはサイドFIREの希望時期と重なるか
- 標準シナリオと慎重シナリオで結果がどう変わるか
- 95歳時点の資産見通しが現在価値でどう見えるか
教育費の正確な金額を当てることが目的ではありません。
教育費、住宅ローン、老後資金が重なる時期を把握し、働き方や貯蓄ペースを考える材料にすることが目的です。
まとめ
子どもがいる家庭のFIRE計算では、教育費をどう見るかが重要です。
教育費は毎年一定ではなく、進学時期によって大きな山ができます。特に大学進学時期は、入学金、授業料、受験費用、下宿費用などが重なりやすい時期です。
子どもが2人以上いる家庭では、進学時期が重なることで、教育費ピークが数年間続くこともあります。
また、その時期に住宅ローンが残っていたり、FIREやサイドFIREで収入を減らしていたりすると、資産の減り方は単純なFIRE計算より大きく変わる可能性があります。
完全FIREかサイドFIREかを考えるときも、教育費ピークの前か、途中か、後かで判断は変わります。
教育費は不安を煽るために見るのではなく、将来の支出の山を整理するために見るものです。
自分の家庭の進学方針や住宅ローン、FIRE希望時期を同じ時間軸で並べて確認してみましょう。
